目次 前章: 5 アプリケーション 次章: 7 国際DOI財団
6 方針
この章では国際DOI財団における方針策定手順を説明し、現行の主要方針を要約して伝えます。
© 国際DOI財団 最終更新日: 2016年11月2日
6.1 方針策定
6.2 協定
6.3 方針
6.4 暗黙的方針
6.5 永続性の確保
方針は国際DOI財団(IDF)の付属定款と設立趣意書に沿って作られます。この枠組みの中でIDFとそのパートナーとの間で正式協定が結ばれ、それらの協定に一致する形で個々の方針が規定されます。
方針はIDF理事会の承認を受けます。方針は定期的に行われるIDF戦略会議やIDF会員会議の協議を通じて作られます。特定の分野を検討する作業部会を通じて方針が作られることもあります。方針は全IDF会員を拘束します。
IDFによって管理されている協定には次のものがあります。
- 登録機関以外の会員に該当する一般会員協定。
- 登録機関と国際DOI財団の関係を規定する登録機関協定 。特定のコミュニティのニーズを満たすため具体的な権利放棄や例外が取り決められる場合を除き、各登録機関に対し平等な条件を定めています。
- 規格の実施、具体的にはISO 26324の運用に関する登録認定機関協定。
正式な方針書には次のものがあります。
- 独占禁止方針。IDFは独占禁止法、規制と財団が執り行うミーティング、プログラム、
活動のすべての法域のガイドラインで厳格なコンプライアンスのオペレーションを実施しています。
- 利益方針の衝突。 財団のディレクターや役員の個人的利益に恩恵がある取引や合意契約を結ぶ検討をする際にIDFの利益を保護する方針。
- コア仕様。IDFの登録機関協定で扱われるDOI®システムの記述に関する技術仕様。
- 停止と解約。 登録機関の停止や解約の場合にDOI名を取り扱う手順の概略。
- 商標方針。国際DOI財団が所有する商標の使用に関する方針。DOI®、 DOI>®、 DOI.ORG®およびshortDOI® は国際DOI® 財団の登録商標です。参考資料として商標現状表も入手できます。
- 特許方針。IDF登録機関における特許権・請求に関する手順。DOIシステムの使用を望む全ての人々がDOIシステムを平等な条件で使用できるようにし、DOIシステム・規格への共同投資を維持、保護し、登録機関が付加価値のあるサービスや機能を開発できるようにするためのものです。詳しい情報はここにあります。IDF自体はDOIシステムにおいていかなる特許権も所有していません。
- DOI プロキシ(技術基盤)方針。登録機関(DOIプロキシサーバーのインスタンスを運営する登録機関と自身のローカルプロキシを運営する登録機関を含む)によるプロキシサーバーのサポートと機能、ならびにデフォルトプロキシのサポートとデフォルトプロキシの機能に関する所要条件
- データ方針。データ(使用統計等)やDOI名解決に関する情報の機密性に関する方針で、IDFと登録機関に適用されます。
- 登録機関協調方針。DOIコミュニティの利益のため、登録機関間の衝突を解決し協調を奨励するための一般規定・手順。
追加的方針には次のものがあります。
- 合意済みメカニズム。DOI構文の中で他の識別子の文字列を組み込むためのもの(他のISO識別子の登録管轄局と合意済みの場合)。
- 規格準拠。DOIの使用にあたってはISO 26324と新たに策定される他の規格に準拠する必要があります。本書(ハンドブック)に準拠することでISO 26324への準拠が保証されます。
IDFの協定・方針に準拠することによって暗黙的に適用される方針がいくつかあります。主に次のものがあります。
範囲
- DOI名はエンティティ(物理的存在、デジタル的存在、抽象的存在)の識別に使用できます。
- エンティティは任意の粒度で識別できます。
- DOIシステムは知的財産のようなエンティティの管理を重視するものですが、ユーザーコミュニティが何らかのエンティティにDOI名を発行することを妨げるものではありません。
使用
- 無償の解決:ひとたび割り当てられたDOI名は誰でも無料で解決できます。解決にあたっては、少なくともある程度の情報は必ず入手可能となります。
- 曖昧な構文:DOI名は曖昧な文字列(無言の番号)であり、DOIシステムにおけるDOI名の運用について番号から何も推測できないようになっています。
費用
- システムの運営費用は登録者が直接的に、または間接的に、負担します。登録機関はIDFの方針に準拠する範囲で独自のビジネスモデルを採用できます。
データ管理
- 全てのDOI名はDOIシステムディレクトリに登録しなければなりません。登録者は(各自が選んだ登録機関を通じて)、自ら登録したDOI名について最新のデータを保守する責任を負います。
- DOIシステムは登録にあたって重複したDOI名を受け付けません。登録者が異なる2つのDOI名で同じプレフィックスを使うことはできませんし、1つのプレフィックスで2つの同じ文字列を割り当てることもできません。
- それぞれ固有のエンティティにはできる限りただ1つのDOI名を割り当てなければなりません。複数の登録機関が同じコミュニティか関連するコミュニティを相手に運営を行う場合、当該登録機関は知的財産にDOI名が割り当て済みか否かをチェックする方法を取り決めることができます。また、一致するDOI名が見つかった場合に取るべき措置は登録機関が決定します。
メタデータ
- 中央IDFサービスはメタデータからDOI名を検索する機能を提供していません。DOIシステム自体に(メタデータからDOI名への)「逆引き」機能はありません。登録機関や他のサービスが付加価値機能として逆引き機能を提供することは認められています。
- 関連メタデータに関し、DOIシステムの方針は登録機関の入力/サービスメタデータ宣言の形式や内容に制約を設けていませんが、入力メタデータはDOIデータモデルをサポートするにあたって必要最低限の要件を満たさなければなりません。
6.5 永続性の確保
DOI情報の永続性はDOIシステムの大きな目標であり、DOIの社会的基盤と方針と協定によって保証されます。いずれかの登録機関が何らかの理由でDOI情報の維持管理をやめる場合は、その記録が別の登録機関に移管されます。これは、それぞれの登録機関が国際DOI財団と結ぶ法的協定に定められています。
永続性とは、指定されたエンティティに関する有用情報が時間が経過しても確実に入手可能であることを意味します。最終的には(方針を通じて)社会的基盤によって保証され、メタデータ管理や解決によるインディレクション等の技術によって支えられ、たとえ関連データ(組織名、ドメイン名、URL等)に正当で望ましく不可避の変更があってもファーストクラスエンティティへの参照を維持することです。識別子は正当な変更に際しても永続しなければなりません。組織名やドメイン等の変更には、正当で望ましく不可避の理由があるからです。
「永続性」は不明確な言葉であるため、以下に記す具体的局面から考察しなければなりません。
- DOIシステムの1設計特性としての永続性。永続性を促進する手段としてのDOI名の主な特徴は次の通りです。
- インディレクション 名前は変えず、現在の属性は変えることができます。識別子と意味論的に結ばれた属性(ドメイン名)を持つURIでは、属性の変更は困難です。デジタル素材がインターネットドメイン名割り当ての予期せぬ変更や意図せぬ変更の影響を受けやすく、ドメイン名解決の結果が左右されることは、広く認められています。http: URIが長期間にわたって永続する識別子とみなされない大きな理由のひとつとして、ドメイン名の割り当てが永久的ではないという事実が指摘されています。
- 名前と所有権の分離 ひとたび作成されたDOI名は、識別子とその所有者を結び付けません。識別子の作成にあたって便宜上使われる命名機関(プレフィックス)は作成の時点で意味を持たなくなり、DOI名の所有権は命名機関に関係なく譲渡できます。
- 名前解決 DOI名は、場所、所有権、記述方法等の変更可能な属性に変更があっても永続する形でオブジェクトに関する情報(メタデータ)まで解決されます。ただし、オブジェクトの基本的用途に変更がある場合はこの限りではありません。
- DOIシステムそのものの永続性。インフラの回復力と持続性はDOIシステムの1設計特性です。
- IDFと登録機関との協定では、登録機関が違反した場合に当該登録機関のDOIシステムデータをIDFに返還することになっています。
- IDFが消滅した場合のため、システムを他の団体に移転する協定が成立しています。
- IDFと技術支援提携業者との協定では、万一現在の技術的実装が終わったり活動を維持できなくなった場合に、全てのDOIシステムデータ、ライセンス、権利等をIDFに返還することになっています。
- Handleシステム解決技術の永続性。Handleシステムはオープン規格ですから、誰でもハンドルサービスを構築/利用でき、ソースコードとAPIは公開されています。現在のシステム運営者であるCNRIに大きな変化があった場合の保証人と移行については、協定が成立しています。
- DOIデータディクショナリ技術の永続性。DOIデータディクショナリはボキャブラリマッピングフレームワーク(VMF)中の1名前空間です。VMFはデータの持続性に関心を寄せる多数の主要メタデータ活動の関与と統制で成り立っています。CNRIはIDFのデータディクショナリとスキーマの管理にあたって必要となるデータや資料の最新版を保管しています(XML/HTML出力の生成に必要なExcelツール/文書等)。ファイルはCNRIのソフトウェアバージョン管理システムMercurialを用いて管理されています。これらは永続性の保証として第三者に委託保管されており、IDFのため準備され管理される資料についてはメタデータツール下請業者Rightscomによってバックアップが整備されています。第三者に委託保管されているバージョンは日常業務に使用されません。
- 技術的基盤の永続性。DOIシステムはHandleシステムにまたがって世界中に分散されたサーバーとサービスサイトからなる多サイトネットワークを使用します。Handleシステムにも同様の分散サイトがあります。登録機関の所在地に設置されたサイトのほかに、専門的なコロケーションホスティングサイト、バーチャル(クラウドコンピューティング)施設等があり、毎日24時間、週7日対応できるリソースや、停電に対処するためのミラーリング装置等が整備されています。IDFはまた、doi.orgおよびdx.doi.orgドメインが永続性のある技術的基盤の一部として運営されるよう徹底しており、ミラーリングとロードバランシングによりHTTPリクエストでdoi.org(またはdx.doi.org、これもサポートされています)のプロキシサービスを確実に利用できるようにしています。
- 識別されるオブジェクトの永続性。正当で望ましく不可避な理由から組織名が変更されるのと同様に、正当で望ましく不可避な理由からあるDOI名によって識別されるエンティティが利用/入手不可となったことを宣言する場合もあります。例えば典型的な出版者の方針では、出版者、所有者、著作権所有者、または著者に代わって法律上の義務を果たすため、あるいは間違いのある記事や結末/記載内容が不正確で危険をもたらしかねない記事が見つかる場合は道徳・倫理上の理由から、例外的に該当項目を電子製品から削除することを定めています。DOIシステムはこのプロセスを処理するメカニズムを提供します。最低でも、DOI名の登録者は「識別されたエンティティは現在利用/入手不可」と伝える応答画面(補足情報を含む)にDOI名を解決させることができます。
- コアメタデータへの解決の永続性。IDFは最低条件として、DOI名が割り当てられたオブジェクトを定義する情報へのDOI名解決を永続的に維持することを義務付けています。これはカーネルメタデータレコード(または何らかの同等のデータ)によって提供されます。
- 関連サービスへの解決の永続性。登録機関によって提供される、DOI解決を通じて利用できる、付加価値サービス(カーネルメタデータの発見を超えたサービス)が、当該登録機関が消滅した場合にIDFによって維持されるという保証はありません。そのようなサービスには、中央DOIレコードで入手できるもの以外の素材が追加で必要となります(例えばメタデータルックアップへのアクセス、ワークフロー手順)。ただしIDFは、そのようなサービスを別の機関へ移管するか、IDF自身でサービスを維持するか、サービスを継続できる第三者へのサービス移管を促す方向で全力を尽くします。目標は、それらのDOIレコードを利用するコミュニティが被る迷惑を最小限に抑えることです。
- コミュニティの利益の永続性。 IDFの社会的基盤は「DOIユーザー」コミュニティの利益を反映します。登録機関はその一部を代表します。例えば「引用リンクサービスのユーザー」というコミュニティはDOIに関心があり、この点についてはIDFと完全に一致していますが、独特の(または他の組織と共通する)応用分野にも関心があります。永続性は(登録機関とIDFの)相互協約です。登録機関がIDFの会員であることをやめると利益とコミュニティの一致が破綻し、DOIの社会的基盤が崩壊する恐れがあります。登録機関会員制度では、記録(レコード)の移管を徹底しDOI解決の継続を保証するため、登録機関に一定の義務を課しています。IDFの会員制度では、コミュニティが自らの利益を越えて長期的な永続性の確保に向けて一丸となって協力することが前提となっています。この前提が成立しない場合に備えて、割り当て済みDOI名の解決を持続するための代案もIDF協定に規定されています。
前章: 5 アプリケーション 次章: 7 国際DOI財団
|
®、DOI®、DOI.ORG®及びshortDOI®は国際DOI®財団 (IDF)の登録商標です。
|